無意識に毛を抜いてしまう抜毛症という疾患

頭髪を気にする女性

 

抜毛症とは、正常に生えている毛髪を抜いてしまう精神疾患の一つです。

 

トリコチロマニア(Trichotillomania)とも呼ばれる抜毛症には、頭髪を抜くケースや、腕や足の毛を抜くというような様々な症状がみられます。衝動制御障害に分類されており、毛を抜きたいという欲求を抑えきれない病気です。

 

そのため、一度だけではなく、継続的に抜き続ける症状となります。あまりにひどい場合には部分ハゲができてしまいます。

 

特に、頭の毛を抜く症状のことを禿頭病(とくとうびょう)とも呼び、多くの患者が経験する症状の一つです。

 

患者本人が意図的に毛を抜く場合だけでなく、無意識のうちに毛を引っ張って抜いている場合もあります。

 

本人がやめたいと思っていながらもやめられないことから治療法が難しい病気の一つです。抜毛症になる人の割合としては全人口中の0.5〜2%程度の人がり患しており、性別としては女性に多くみられます。

 

また、強迫性障害を訴える患者の間でも良くみられる症状となっています。

 

抜毛症になる原因とは

はっきりとした原因というのは、いまだ突き止められてはいませんが、主な原因としてストレスが原因ではないかと言われています。

 

特に、成長期における体の変化、体毛が生えてくることに対する不安、思春期における人間関係の悩みや社会人になっての仕事などから来るストレスが原因の可能性が高いようです。

 

また、別の学説によれば、脳と細胞とを結ぶ神経細胞のコミュニケーションがうまく機能しないためにこのような症状を起こしているのではないか、とも言われています。

 

抜毛症は子供が発症することも多い

抜毛症を発症しやすい傾向があるのは、女性で主に小学生から高校生と言った思春期にかけての子どもに多いと言われています。

 

平均年齢は11歳となっています。小さい間というのは、精神的にも未熟で、心や体の変化への対応に戸惑いがちです。

 

そのような感情から抜毛症に至りやすいと言われています。

 

というのも、髪の毛を撫でることで、精神的な安心感が得られるからと、言われています。幼少期に親などから頭を撫でてもらった経験が反映されているのかもしれません。

 

この経験を再体験したいがために、自分で髪の毛を触るという行為が発現します。そして、髪の毛を抜くことで、痛みを感じ、自分という存在を再認識する気持ちがあるようです。

 

このように抜毛症は複雑な心理のメカニズムと絡み合っているのでこれという原因を突き止めるのが困難な疾患です。

 

抜毛症と皮膚むしり症の共通点は

毛を抜くことが抜毛症であるのに対して、皮膚むしり症とは、正常な皮膚をはがしたり爪でひっかくことによって傷をつける病気を言います。

 

もともとが綺麗な皮膚だった場所だけでなく、ニキビや吹き出物ができた時の表皮をはがすというような症状を訴える人も居ます。また、傷が治ってきたときに出来るかさぶたをはがすと言う人も居ます。

 

皮膚むしり病と診断されるのは、皮膚をむしることで傷が出来て病変している場合になります。

 

そして、皮膚をむしる行為やそれに関することを考えることで1日1時間以上をかけていることがあります。

 

皮膚むしり病の罹患者の多くが女性で中学生などの思春期から大人にかけて発症していきます。思春期にはニキビが出来やすく、その芯を取り除くために皮膚を触ることが発症の引き金になるとも言われています。

 

抜毛症と皮膚むしり症の共通点は、なんといっても正常な状態を傷つけてしまうことです。抜毛症の時には髪の毛を、皮膚むしり症では皮膚を傷つけることで自己を満たします。

 

また、これらの症状を止めたいと思ったり、行う時間を減らそうと考えはするものの、それが改善できないことも共通点の一つです。

 

辞めたいと思いながらも、手が無意識に髪や皮膚を触ってしまっているのです。

 

さらに、これらの症状を人に知られたくないと思うことも共通点の一つです。髪を抜くことや皮膚を傷つける行為が正常ではないと自分でわかっているからこそ、他人に知られたくないと思うのです。

 

そのため、ハゲができた部分を別の部位の髪の毛で隠します。また、自分で傷つけた肌を見せないようにするために、衣類で隠すケースも頻繁に見られます。

 

抜毛症の治療方法は

現在の日本に置いては、抜毛症の根本的な治療法が確立されていません。そのため、主に精神科による治療が行われます。

 

第一に示されるのが認知行動療法です。髪を抜くと言う行動に対して、それが普通ではないということを認知、気づかせていく治療法です。

 

まずは、髪や体毛を抜き出していることを自分自身で気づくように訓練していきます。初めの間は、これを文字で表現することで、認知できるようにしていきます。

 

次の段階としては、この毛を抜き出しているということに気付いた状態に対して、それをしない行動を続けるように訓練していきます。

 

もちろん、これらの訓練をしている間、家族など周囲に居る人は、その方の症状が改善していけるようにサポートします。

 

また、第二に示されるのが薬物療法です。

 

現段階で薬物療法がてきめんに効くという研究結果は、残念ながら発表されていません。

 

しかし、SSRIなどの精神安定効果をもたらす薬を投与することによって一部の人の間では症状が改善しているとも言われています。